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脈管診療施設紹介

第8回 糖尿病足病変に対するフットケアとチーム医療

渥美義仁

Angiology Frontier Vol.10 No.1, 67-71, 2011

 糖尿病患者の足潰瘍・壊疽の発生や下肢切断を減少させるには,初発にせよ再発にせよ足潰瘍となる以前に早期に発見し対処すべきである。この基本を臨床の現場で実践するには,糖尿病患者の通常の診療を担当する医師や看護師が足に関心をもち,効率的な予防的フットケアを行うことが基本である。そのうえで進行した足病変を発見した場合には,適切な治療ができる集学的医療とのネットワークを活用することが求められる。

1 糖尿病患者の下肢切断

 糖尿病患者数の増加に伴って,糖尿病に関連した足潰瘍や壊疽の患者数も,これらの足潰瘍や壊疽から切断に至る例も世界的に増えている。欧米では,糖尿病患者における足潰瘍の年間発生率は1~4%,有病率は4~10%と高率で,糖尿病でない人と比べると約10~30倍とされている1)。糖尿病患者の約15%が生涯のうちに1回は足潰瘍を患うとされてきた。さらに,世界のどこかで糖尿病を原因として,30秒に1本の頻度で下肢が切断されていると推定されている2)。このような高頻度な下肢切断は,発展途上国での糖尿病患者数とそれに伴う合併症の急増,足病変発見の遅れ,創傷治療の知識と人材を含めた医療資源不足によると考えられている。
 スウェーデンの下肢切断率に関する登録住民調査は,初回の切断率が糖尿病患者では非糖尿病者に比して約8倍と高率であったことを示している(表1)。

同調査での切断率は糖尿病でも非糖尿病でも高齢者ほど高く,65~74歳に比べて85歳以上が2~4倍と高率であった3)。また1型糖尿病患者3万例を平均13年間追跡した調査によると,追跡期間中に下肢切断した率を年齢などを合わせて比較すると,比較した一般人が若く切断が少ないために86倍と高率であった4)。
 さらに,糖尿病で下肢を切断した場合は切断後の死亡率が高く,切断1年後に13~40%,3年後には35~65%が死亡するとされている1)。このように,糖尿病患者は足潰瘍や下肢切断のリスクが高率で,発症すると生命予後も不良であることがわかる5)。

2 わが国の足潰瘍・壊疽とフットケアの現状

 わが国の糖尿病患者が足潰瘍や壊疽を発症して切断となる率は,欧米に比べると著しく低率である。下肢切断率を世界と比較した調査によると,英国の糖尿病患者に比べてわが国の糖尿病患者の下肢切断率は10分の1以下と報告されている。このように糖尿病患者の下肢切断率が低いのは,日本人に限らずアジア人(先進国に在住の場合)全体に当てはまる傾向である。米国の在郷軍人病院で行われた糖尿病患者における下肢切断率の調査では,白人に比べるとアジア人は3分の1と低率であった。この理由としては,冠動脈と同様に下肢の動脈硬化の発症率が少ないことと,家のなかでは素足で生活するので足病変を早期に発見できること,などによると考えられている。しかし,最近はわが国でも糖尿病による足病変患者が増加している。厚生労働省の国民健康・栄養調査によると,わが国の糖尿病患者で足壊疽を合併した人の率は,1997年の調査では0.4%であったが,2002年は1.6%と増加していた。ただし,2007年の調査では0.7%と減少していた。これは,糖尿病に対する経口薬や多様なインスリンが1990年代から登場して全体としては血糖コントロールが改善したこと,足病変に対する認知度が向上したこと,血管内治療が進歩したこと,などによると考えられる。

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