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腎研究最前線―Up Date Nephrology

再生医療―腎再生(2)―ヒト多能性幹細胞を用いた腎臓誘導系開発の現状

髙里実

Nephrology Frontier Vol.14 No.2, 74-77, 2015

「はじめに」1998年,Thomsonらによって,世界初のヒト胚性幹細胞(ES細胞)が樹立された1).ES細胞は内胚葉,中胚葉,外胚葉の三胚葉のいかなる組織にも分化できる細胞,いわゆる「多能性幹細胞」である.この成果により,理論上,あらゆるヒトの臓器を試験管内で人工的に作製する道が開けた.ところが,ヒトES細胞は受精後4~5日目のヒトの受精卵を材料として樹立されることから,その作製には生命倫理上,重大な問題があった.そのため,多くの研究室ではマウスのES細胞を用いて,各臓器の分化誘導系の研究を進め,その知見を蓄えてきた.こうしたなか,2008年に高橋,山中らが,ヒトES細胞と同等の多分化能を持った,ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)の樹立に成功する2).これにより,幹細胞作製時の生命倫理上の問題,移植時の免疫拒絶反応の問題などに目処がつき,結果として現在,ヒト多能性幹細胞を用いた臓器誘導の研究が世界中で爆発的に進行している.
「KEY WORDS」iPS細胞,分化誘導,腎臓,再生医療,オルガノイド

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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