「はじめに」硫化水素(H2S)は,一酸化窒素(NO),一酸化炭素(CO)に次ぐ第3のガスメッセンジャーであり,生物学的活性作用として神経伝達の修飾,平滑筋弛緩による血管拡張,インスリン分泌抑制やアポトーシスの調節などがあげられる.生体内におけるその産出はL-CysteinよりCystathionine γ-lyase(CSE)とCystathionine β-synthase(CBS)を主要な産生酵素として行われる.この産生酵素は細胞特異性に発現しており,例えば,平滑筋細胞にはCSE,脳神経細胞にはCBS,肝臓や膵β細胞にはCSEとCBSがともに分布している.しかしながら,個々の疾患病態への関与についての知見はいまだ乏しく,腎臓領域においてもそれらの発現やその機能・機構については明らかではない.