はじめに  前回の連載では,「酸塩基平衡の最初の防波堤」である体液の緩衝機能(特に重炭酸緩衝系)について解説した.生体は蛋白の代謝により1日に1mEq/kg/日程度のH+(不揮発性酸:塩酸,硫酸,ケト酸など)を産生している.体重50kgの成人の細胞外液では体液のH+濃度はわずか40nEq/L(0.00004mEq/L!)である.もし緩衝系が存在しなければ,体重50kgの成人の細胞外液(10L)にわずか1mEqのH+が追加されるだけで,pHは4~5近くなってしまう!(H+=0.0001mEq/L,pH4).  一方,この緩衝系の作用はあくまでも一時的なもので,不揮発性酸が腎臓より排泄されなければ,体液は最終的にアシドーシスに陥る.今回は,腎臓による不揮発性酸排泄メカニズムについて記す.