水と電解質異常
カリウム代謝異常と治療
Disorders of Potassium Metabolism
Nephrology Frontier Vol.10 No.4, 28-34, 2011
SUMMARY
低カリウム血症,高カリウム血症は日常診療上頻繁に遭遇し,様々な疾患の診断の手掛かりになるとともに,時に緊急治療の対象にもなるため,実地医家はその対処法をよく知っておく必要がある.本稿では,基本的なカリウム調節メカニズムについて述べた後,カリウム代謝異常をきたす疾患や対処法につき,最近の知見も紹介しながら具体的に解説する.
KEY WORDS
◆低カリウム血症 ◆高カリウム血症 ◆TTKG ◆アルドステロン ◆主細胞
Ⅰ 血清カリウム濃度の調節
カリウム(K)は細胞内の主要な陽イオンである.細胞内外の濃度差は細胞膜Na-K-ATPaseポンプにより形成され,この濃度差が静止膜電位を決定する.一方,細胞内のKは細胞機能維持にも重要な役割を果たしている.したがって,K濃度の異常は心臓,筋肉,神経など興奮性の細胞活動に影響を及ぼし,K欠乏は様々な細胞の機能異常をもたらす.
ヒトは食事から50~100mEq/日のKを摂取し,これに見合った量が尿中に排泄される.許容範囲は広いが,K欠乏時でも尿中Kを完全にゼロにできない.以上より血清K濃度は,
①細胞内外のKシフト(分~時間のオーダー)
②腎性,すなわち尿中へのK排泄の調節(半日~数日のオーダー)
の2つで規定されることがわかる(表1).

①により短期的調節が行われ,②によりインアウトのバランスが保たれる.血清K濃度の異常は,これらのメカニズムの破綻,または調節能を超えたKの負荷・欠乏が存在することを意味する1)-4).
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。