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検尿ノススメ

第38回 角柱・角錐台型尿細管上皮細胞の出現意義

横山貴岩本尚子堀田茂新田孝作

Nephrology Frontier Vol.10, No.3, 47-52, 2011

はじめに
 尿細管上皮細胞は,近位尿細管から腎乳頭までの内腔の上皮層を構成する.糸球体腎炎やネフローゼ症候群などの腎実質疾患, 薬剤性腎障害(水銀や鉛などの重金属,アミノグリコシド系抗菌薬,免疫抑制剤や抗癌剤),腎虚血または腎血漿流量減少を呈する病態(外傷,高度の火傷や脱水)などで尿中に出現するが,健常人でも少数認められる.慢性糸球体腎炎などでは,尿細管間質病変の形成に伴って,近位尿細管上皮細胞の尿中排泄が増加し,蛋白尿を伴って鏡検400倍にて1視野に1個以上出現していた場合は,推算糸球体濾過量(eGFR)60mL/min/1.73m2未満である可能性が示唆される1).尿中に数多く認められた場合は,急性尿細管傷害(ATI:acute tubular injury)が考えられ,注意深く観察し,迅速に臨床へ報告することが重要である.

はじめに(続き)

 本稿では,2010年7月~2011年6月までに尿沈渣検査で,角柱・角錐台型の尿細管上皮細胞が検出された1,190検体中,当院腎臓内科外来にて経過観察中であった176症例を対象とし,患者背景,原疾患,尿細管上皮細胞の形態学的特徴や尿所見,他の検査結果,eGFRとの関係および前回値との比較について述べる.eGFRは,194×血清クレアチン値-1.094×年齢-0.287(女性の場合:×0.739)で求めた.各検討項目の値は平均値±標準誤差で表示し,Student's t testを用いて危険率p<0.05を有意とした.

患者背景および疾患との関係

 角柱・角錐台型の尿細管上皮細胞が尿中に出現した患者は176症例(男性107名,女性69名).年齢は50.3±1.39歳であり,原疾患の内訳はIgA腎症(33例),ループス腎炎(17例),微小変化型ネフローゼ症候群(17例),膜性腎症(11例),原因不明のネフローゼ症候群(10例),紫斑病性腎炎(8例),糖尿病性腎症(8例),腎硬化症(6例),巣状糸球体硬化症(5例),サルコイドーシス(2例)およびその他(59例)であった.糖尿病の合併は,46例に認められた.

形態学的特徴

 角柱・角錐台型尿細管上皮細胞の形態は,尿細管内腔面側が短く,基底膜面側が長く広がっている.立体感が強く,側面像は角柱型,正面像は角錐台形型を示す.辺縁構造は角状で,基底膜側ではやや不明瞭である.表面構造は均質状および微細顆粒状であり,細胞質は無染色で黄~灰白色調である.核は濃縮状で,基底膜側に位置することが多く偏在性であり,日常多く遭遇する辺縁構造が鋸歯状(凹凸状),表面構造はゴツゴツとした不規則型顆粒状を呈する鋸歯型尿細管上皮細胞(近位尿細管由来)とは異なる形態を呈する.比較的小型で細胞表面が均質状であることから,大部分は集合管,遠位尿細管とHenleの係蹄由来の尿細管上皮細胞が考えられる.しかし,Henleの係蹄由来の細胞は,遠位尿細管由来の細胞に比べて細胞の丈が低いことから,集合管および遠位尿細管上皮細胞の可能性が考えられる(図1~6).

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