はじめに  尿細管上皮細胞は,近位尿細管から腎乳頭までの内腔の上皮層を構成する.糸球体腎炎やネフローゼ症候群などの腎実質疾患, 薬剤性腎障害(水銀や鉛などの重金属,アミノグリコシド系抗菌薬,免疫抑制剤や抗癌剤),腎虚血または腎血漿流量減少を呈する病態(外傷,高度の火傷や脱水)などで尿中に出現するが,健常人でも少数認められる.慢性糸球体腎炎などでは,尿細管間質病変の形成に伴って,近位尿細管上皮細胞の尿中排泄が増加し,蛋白尿を伴って鏡検400倍にて1視野に1個以上出現していた場合は,推算糸球体濾過量(eGFR)60mL/min/1.73m2未満である可能性が示唆される1).尿中に数多く認められた場合は,急性尿細管傷害(ATI:acute tubular injury)が考えられ,注意深く観察し,迅速に臨床へ報告することが重要である.