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尿細管の再生医学

急性腎不全における尿細管修復過程と再生

藤垣嘉秀

Nephrology Frontier Vol.10, No.3, 24-27, 2011

SUMMARY
 酢酸ウラニウムによる軽度の近位尿細管S3セグメント障害では,障害を免れた成熟近位尿細管細胞が自己複製後に脱分化・増殖し局所修復にあたる.一方,急性腎不全を呈するような広範な障害では,バックアップ機構としてS3セグメント遠位領域の前駆様細胞が再生・修復に関与する.急性腎不全後の尿細管修復は創傷治癒の一形態と考えられるが,近年,尿細管細胞自体で発現して増殖に関与する因子も明らかになってきた.

KEY WORDS
◆急性腎不全 ◆再生 ◆修復 ◆前駆様細胞

Ⅰ はじめに

 急性腎不全(急性尿細管障害)後の再生尿細管細胞の起源に関しては,骨髄由来幹細胞,間葉系幹細胞や尿細管以外の腎内幹細胞,尿細管細胞が候補とされ検討されてきた.近年,遺伝子標識の手法から,虚血再灌流障害では尿細管細胞自体が再生尿細管細胞の主要起源であることが証明された1).しかし,尿細管上皮幹細胞の存在や尿細管再生・修復様式,増殖・分化制御に関しては明らかとは言えない.本稿では,近位尿細管S3セグメント障害を惹起する酢酸ウラニウム(UA)によるラット急性尿細管障害モデルからの知見を中心に概説する.

Ⅱ 成熟近位尿細管の生理的再生機構

 上皮組織系は,一定で継続的な再生機構により細胞数が維持されている.正常成体ラットにS期を標識するbromodeoxyuridine(BrdU)を2週間持続投与すると,近位尿細管S3セグメントで約40%の細胞が標識される2).尿細管細胞数の増減を認めないことから,単一細胞ごとの脱落・細胞死が生じ,再生により約20%の細胞が補充されたと考えられる.Vogetsederらは,ラットS3セグメントでは数多くの増殖可能細胞が存在し,増殖細胞は成熟形質を維持し,幹細胞から分裂した娘細胞で認めるtransit amplifyingの性質を示さないことから,S3セグメントは幹細胞系とは異なり,成熟尿細管細胞の自己複製による生理的再生機構により維持されているとした3)4).
 筆者らも,正常ラットS3セグメントに認めるBrdU陽性細胞が成熟近位尿細管形質を保持し,分裂時に刷子縁を有することから細胞分裂に脱分化を要さないことを確認した5).しかし,自己複製で新生した細胞は遊走能を持たないとされるため6),この様式での広範な組織修復は難しいと考えられる.

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