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腎生理の基礎知識

第17回 傍糸球体装置(Juxtaglomerular Appratus)の構造と機能(2)JGAのtubuloglomeruro feed backのメカニズムとレニン分泌機能

関根孝司

Nephrology Frontier Vol.10, No.2, 55-61, 2011

はじめに
 前回の連載でJuxtaglomerular Apparatus(JGA)の構造とTubuloglomerular feedback(TGF)について述べた.JGAの役割は,①macula densa(MD)細胞近傍でのNaCl濃度を一定に保つこと(遠位尿細管以降のNaCl再吸収のキャパシティーが小さいため,TAL終末部でのNaCl濃度を一定にするためにはこの部分でGFRのフィードバックをかける必要がある),②MDでのNaCl濃度からレニン分泌量を調節することの2つである1)2).
 今回は,これらのJGAの機能とシグナル伝達の詳細を述べる.

Macula Densa(MD)細胞の管腔内NaCl感知機能

 前回述べたように,MD細胞はHenle係蹄太い上行脚(TAL)の一部であり,約20~30個の特殊な形態の上皮細胞である1)-3).MD細胞はTAL終末部を流れるNaCl量を検知し,その情報を輸入細動脈に伝えることにある.それでは,MD細胞はどのようにTAL終末部を流れるNaCl量を検知しているのであろうか?
 MD細胞はTAL細胞が持つNKCC2(NKCC2AおよびNKCC2B),ROMK,Clチャネルなどの輸送体を同様に有している1).ループ利尿薬の投与による実験から,MD細胞が「NaClセンサー」を有しているのではなく,「NaClのMD細胞内への取り込みがTGFの直接の引き金になっている」ことが判明している1)2).これはROMKの阻害薬投与,またROMK KOマウスからの実験からも明らかである.それでは,MD細胞に取り込まれたNaClのうち,Na+とCl- のどちらがMD細胞の反応に重要なのだろうか?
 図1A4)に示すように,NaClのCl- を種々のアニオンで置換し,MDの後方からmicroperfusionで還流すると,近位尿細管の起始部の管腔液の流量が減少する.

この現象がTGFである.一方,NaClのNa+を各種のカチオンに置換しても,Cl- の置換で認められたような,近位尿細管の起始部の管腔液の流量の変化は認めない(図1B)4).この事実は,「MD細胞がCl- を取り込むことがTGFを起こす引き金になる」ことを明確に示している.
 MD細胞がNaClを取り込むことにより,細胞内では以下のような変化が生じる.
①細胞質内のNa+,Cl- の濃度上昇
②細胞質pHの上昇
③MD細胞の脱分極
 これらの変化のなかのいずれもが,TGFに一定の役割を果たしている可能性がある.特に細胞の脱分極はMD細胞の細胞内Ca濃度([Ca2+]i)変化を生じ,その変化がTGFの重要な要素である可能性が指摘されている.MD細胞にはニフェジピン感受性電位依存性Caチャネル,あるいは,TRPファミリーの発現が予測されている1).

糸球体輸入細動脈への作用

 TGFの本体は,MD細胞からのシグナルによる糸球体輸入細動脈の攣縮である.Micropunctureを用いた研究では,TALの流量増加(それによるMD細胞のNaClの取り込み増加)により,輸入細動脈の抵抗が30~40%上昇する1).また,この輸入細動脈の反応は,輸入細動脈がMD細胞に最も近接する糸球体への入り口部で生じる.
 TGFによる輸入細動脈の攣縮の最も大きな作用因子は,輸入細動脈へのL型Caチャネルを介したCaの流入である.Caチャネル阻害薬の添加はほぼTGFを完全に消失させる.
 また,MD細胞と輸入細動脈が接している部分のみならず,輸入細動脈のより近位側にもconnexin 40などを介して攣縮が生じ,TGFを増幅させる.
 それでは,MD細胞と糸球体輸入細動脈を結ぶシグナルは何であろうか? 多くの実験から,このシグナルはMD細胞から放出されるアデノシンと,糸球体輸入細動脈に発現するアデノシン受容体(特にA1タイプ)によりなされると考えられている1)(図2)5).

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