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検尿ノススメ

第37回 多発性囊胞腎患者における尿検査の必要性

横山貴大沼榮子望月俊雄新田孝作

Nephrology Frontier Vol.10, No.2, 51-54, 2011

はじめに
 常染色体優性多発性嚢胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease:ADPKD)は,PKD1遺伝子またはPKD2遺伝子の変異が発症に関与し,全身に様々な合併症を生じる.腎の症状としては,腎機能障害,高血圧,腎不全がある.約50%のADPKD患者は,60歳までに末期腎不全状態となる.したがって,腎機能の障害程度によって種々の成分が尿中に排泄されることが予測され,尿沈渣検査における各種成分のモニタリングは,臨床像を推定する上で有用な検査に成り得ると考える.
 本稿では,東京女子医科大学第四内科にて外来経過観察が可能であったADPKD患者17名を対象に,尿検査所見(蛋白定性値,尿沈渣)について検討した.17例の尿沈渣所見については,次のように評価した.血球類と上皮細胞類は個/HPF(強拡大:400倍で1視野表現),円柱類については硝子円柱は個/LPF(弱拡大:100倍で1視野表現)で検討した.推算糸球体濾過量(eGFR)は,194×血清クレアチニン値-1.094×年齢-0.287(女性の場合×0.739)で求めた.比較検討に用いた数値は,平均値±標準誤差と中央値である.有意差検定は,Mann-Whitney U testを用いて危険率p<0.05を有意とした.

患者背景

 17例の内訳は男性10名,女性7名,年齢は44.5±10.0歳であった.全症例のeGFRは43.96±6.18mL/分/1.73m2で,CKDステージ分類は,ステージⅠ:17例中1例(5.9%), ステージⅡ:17例中3例(17.6%), ステージⅢ:17例中9例(53.0%), ステージⅣ:17例中1例(5.9%),ステージⅤ:17例中3例(17.6%)であった.血圧については,17例中14例(82.4%)が高血圧であった.

ADPKDの尿所見

1.尿蛋白

 尿中の蛋白,主にアルブミンは糸球体における血管内皮,基底膜,糸球体上皮細胞の障害によって多量に漏出するか,もしくは尿細管上皮細胞障害によって再吸収障害となり蛋白尿として検出される.今回の検討では,(-):17例中11例(64.7%),(±):17例中3例(17.6%),(1+):17例中1例(5.9%),(2+):17例中2例(11.8%),(3+):17例中0例(0%)であり,陰性症例が多かった.しかし,経過観察をすると今回値は陰性であっても,過去に1+以上を呈している症例が17例中7例(41.2%)もあった.したがって,蛋白尿については,陰性,初発陽性,再発陽性なのかを観察することが重要と考える.なぜなら,ADPKDでは蛋白尿が腎機能の予後不良因子だからである1)2).さらに,蛋白尿,アルブミン尿は腎容積と相関することが報告されている3).

2.血尿

 糸球体腎炎や腎・尿路生殖器系の炎症,結石や腫瘍など,様々な原因によって尿に赤血球が混入した状態が血尿である.血尿診断ガイドラインでは,尿沈渣検査にて目視法(鏡検法)では,強拡大400倍で,1視野に5個以上(5個以上/HPF)の赤血球が認められた場合を血尿と定義している4).今回の検討では,潜血反応が(-):17例中9例(52.9%), (±):17例中3例(17.6%),(1+):17例中1例(5.9%),(2+):17例中2例(11.8%),(3+):17例中2例(11.8%)であり,陰性症例が多かった.尿中赤血球数では,17例中6例(35.3%)が血尿であった.経過観察をすると今回値は陰性であっても,過去に1+以上を呈している症例が17例中9例(52.9%)もあった.したがって,蛋白尿と同様に血尿についても,陰性,初発陽性,再発陽性なのかを観察することが重要と考える.なぜなら,ADPKDでは30歳までに40%の患者が肉眼的血尿を経験し5),30歳以降に血尿が認められる患者よりも予後が不良だからである.さらに,血尿は腎容積と相関することが報告されている3).血尿と診断された場合は,赤血球形態の鑑別が重要となる.尿中に認められる赤血球の形態は,IgA腎症などで認められる糸球体型赤血球(変形赤血球:図1),尿路感染症,結石症や腫瘍などで認められる非糸球体型赤血球(均一赤血球:図2)がある.

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