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多発性囊胞腎における最近の研究と治療の進歩

多発性囊胞腎の腎囊胞・肝囊胞の塞栓療法

諏訪部達也住田圭一早見典子乳原善文

Nephrology Frontier Vol.10, No.2, 30-35, 2011

SUMMARY
 多発性嚢胞腎(ADPKD)患者は,腎臓において嚢胞形成が顕著になり腫大腎を呈するが,一方で嚢胞形成が肝臓にも起こり顕著になった場合には,多発性嚢胞肝(ADPLD)と称される.肝腎が著明に腫大すると,腹部膨満症状が強くなるばかりでなく,嚢胞出血や嚢胞感染を起こすこともある.症候性となると治療介入が必要になる.著明な腫大腎または腫大肝に対しては,腎動脈または肝動脈塞栓術(TAE)がsize reductionに有効であり,2011年4月までに当院にて約1,000例に対して施行された.TAEは,腫大腎に対しては極めて効果的であるが,腫大肝においては治療が嚢胞集蔟部位に限定されるため,腫大肝全体の縮小には至らず,治療効果という点においては課題が残されている.

KEY WORDS
◆ 多発性嚢胞腎(ADPKD) ◆ 多発性嚢胞肝(ADPLD) ◆ 腎動脈塞栓療法(TAE) ◆ 肝動脈塞栓療法(TAE)

Ⅰ はじめに

 1996年に最初の1例目を経験してから,我々が症候性の多発性嚢胞腎(ADPKD)患者に対して腎または肝TAEを施行した症例数は,2011年4月までに1,000例に達した.今回は1,000例(腎704例,肝296例)の経験を元に,ADPKDに対する動脈塞栓療法について詳述する.
 ADPKDの腫大腎に対しては,それまでは外科的腎摘除術,嚢胞ドレナージ術,嚢胞開窓術などが行われてきたが,易出血性が問題であった.特に外科的腎摘除術に関しては周辺組織との癒着が高度な症例が多く,手術に際して大量の輸血を必要とした.また,両側腎摘除術を施行した場合には術後のイレウスや腎性貧血が問題であり,当院でも,腫大腎症例に対して外科的に両側腎摘除術を行った後に,難治性イレウスを発症した症例を経験した.これを契機に他の治療法の模索が行われた.1996年に転倒後重篤な腎出血をきたした症例に遭遇した時,出血に対する止血目的で選択的腎動脈塞栓術をゼラチン(gelfoam)を用いて施行した.すると,止血が確認されたばかりでなく,腫大腎の縮小も認めた1).以後,倫理委員会での承認を得て,著明な腫大腎による腹部膨満の強い患者および腎出血症例に対して腎動脈塞栓療法を行うようになった.塞栓物質としてはゼラチンでは効果が不充分で,最終的にはプラチナマイクロコイルを用いることで効果が最大限に得られ,安全に施行できることが確認された2).2001年には,倫理委員会での審査の後に,ADPLDの腫大肝に対しても動脈塞栓術を開始した3)4).

Ⅱ 腎動脈塞栓療法(TAE)の効果機序

 通常の腎不全患者では腎不全の進行とともに腎は萎縮し,腎動脈は退行していく.しかし,ADPKD患者では透析導入後にも腎腫大が進行する症例が存在する.CTやエコーなどの検査では腎臓は嚢胞の集簇にしか見えないが,血管造影検査を行うと著明に発達した腎動脈分枝が認められ,ドップラーエコーでは嚢胞壁に沿って豊富な血流が確認される(図1).

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