<< 一覧に戻る

ネフローゼ症候群の治療―免疫抑制薬の新たな可能性―

免疫抑制薬の新たな可能性

武井卓

Nephrology Frontier Vol.10, No.1, 40-45, 2011

SUMMARY
 ネフローゼ症候群は,免疫反応の調整不全や免疫複合体が関与して生じる場合が少なくない.これらの病態には免疫抑制薬が有効な手段となるが,リンパ球の増殖を直接的に阻害する副腎皮質ステロイド薬は副作用が多く,新たな免疫抑制薬への治療のパラダイムシフトが必要となってきている.リンパ球におけるde novoの核酸合成に拮抗する代謝拮抗薬(ミゾリビン,MMF),リンパ球の増殖シグナルであるIL-2産生を抑制するカルシニューリン阻害薬(シクロスポリン,タクロリムス),リンパ球の表面抗原を標的とした抗体が副腎皮質ステロイド薬に代わる新しい治療薬として注目されている.

KEY WORDS
◆ シクロスポリン ◆ ミゾリビン ◆ ミコフェノール酸モフェチル ◆ タクロリムス ◆ リツキシマブ

Ⅰ はじめに

 ネフローゼ症候群の治療は従来,副腎皮質ステロイド薬を主体に行われてきた.しかし,長期大量投与により副腎皮質ステロイド薬の易感染性,糖尿病,骨粗鬆症,白内障,消化性潰瘍など多岐にわたる副作用がクローズアップされている.なかでも成人においては骨粗鬆症,骨折はADLを低下させる.新しい免疫抑制薬の登場により副腎皮質ステロイド薬の投与量を少なくし,これらを軽減する取り組みが行われ始めている.治療プロトコールの見直しには海外からの報告を参考にしながら,日本での臨床研究が必要になっている.しかし,症例数が少ないことから十分な検討がなされていないのが現状である.ここでは,シクロスポリン,ミゾリビン,ミコフェール酸モフェチル(MMF),プログラフに加え,最近,当科で頻回再発型ネフローゼ症候群に使用して有効性を示した生物製剤であるリツキシマブについて概説する.

Ⅱ シクロスポリン

 カルシニューリン阻害薬はCa2+カルモデュリン依存性の脱リン酸化酵素でありT細胞受容体で活性化され,転写因子であるnuclear factor of activated T cell(NFAT)を脱リン酸化酵素でインターロイキン(IL-2)などのサイトカイン転写を誘導する.シクロスポリンはこの過程を細胞内のシクロフィリンと結合することでIL-2産生を抑制する.頻回再発型ネフローゼ症候群またはステロイド抵抗性ネフローゼ症候群に保険適応があり,微小変化型ネフローゼ症候群や巣状糸球体硬化症(FGS)において副腎皮質ステロイド薬に次ぐ第2選択薬として最も利用されている.Takedaらはabsorption profileに基づいて,ネオーラル®(一般名;シクロスポリン)1日1回投与法で難治性ネフローゼ症候群に対する治療効果を検討し,シクロスポリン投与量を血中濃度曲線下面積(AUC)0~4が1,500~2,000ng/時/mLピーク値を700~800ng/mLと設定することを提案した1).我々も同様に効果を報告した(図1)2).

記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。

メールアドレス

パスワード

M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。

新規会員登録

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る