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香りの世界

第8回 匂わない─嗅覚順応・疲労と慣れ(馴化)

廣瀬清一

鼻アレルギーフロンティア Vol.19 No.2, 44-45, 2019

嗅覚は,ヒトの五感のなかでも複雑で理解しがたい存在である.
他の感覚器官に比べて疲労しやすい嗅覚は,同じニオイを嗅ぎ続けると,数分のうちに感度が著しく低下する.しかし,その状態でも別のニオイに対する感度は,一部を除き影響を受けずに正常に働く.
このような嗅覚順応は,生活のなかでよく起こる現象であるが,自分自身ではほとんど気づかない.ヒトの進化過程で何らかの利点があって獲得した特性に違いない.
見ている対象が急に霞んだり,話し手の声が急に聞こえなくなるようなことはない.視覚や聴覚では,嗅覚順応と同じような現象は起こらない.
ところで,1日中,たくさんのニオイを嗅ぐ職業がある.調香師(香料)をはじめソムリエ(ワイン),茶師,唎酒師,コーヒー鑑定士,ブレンダ―(ウイスキー)などのニオイの専門家は,嗅覚順応にどのように対処しているのだろうか.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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