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香りの世界

第7回 夢魔

中村祥二

鼻アレルギーフロンティア Vol.19 No.1, 44-45, 2019

中世欧州にはさまざまな魔物が出没した.夢魔(ナイトメア)もその一種だ.夢魔は夜,寝室に現れて人々を揺すったり,押さえつけたり,恐ろしい言葉を投げかけて眠る人々を苦しめた.尼僧を誘惑するために男の姿をとる夢魔も出没した.尼僧たちは男と寝たかのように感じ,朝目覚めると穢されたと感じたのである.かの精神分析医学者のフロイトは,この夢魔をどう分析したのだろうか.
夢魔が寝室に入るのを防ぐために,人々は香りのよい草や葉,枝,花を寝室の入り口や窓に掛けて休んだ.すると夢魔は現れなくなり,眠りを快くすることができた.人々は,これらの植物の香りを夢魔が嫌って来なくなったものと考えた.現在,この話をまともに考えるとおかしな話なのだが,寝室に漂うかぐわしい香りが人々を深い眠りに誘ったと解釈すれば,納得できない話ではない,と私は思っている.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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