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座談会(Round Table Discussion)

花粉症 2011~花粉大量飛散時における患者のための治療法~

大橋淑宏大久保公裕岡本美孝増山敬祐

鼻アレルギーフロンティア Vol.11 No.1, 7-13, 2011

2010年花粉飛散状況と2011年花粉飛散予測
大橋 2010年春は雨の日が多かったことも影響し,全国的に花粉飛散量が少なく,予測された飛散量を下回った地域が多かったようです.実際に,先生方の地域の状況はいかがでしたでしょうか.

出席者
アクティ大阪耳鼻咽喉科医院 副院長
大橋 淑宏〈司会〉(写真中央左)

日本医科大学耳鼻咽喉科学 教授
大久保 公裕(写真左)

千葉大学大学院医学研究院
耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学 教授
岡本 美孝(写真右)

山梨大学大学院医学工学総合研究部
耳鼻咽喉科・頭頸部外科 教授
増山 敬祐(写真中央右)

2010年花粉飛散状況と2011年花粉飛散予測(続き)

増山 山梨では,2月中旬の降雪や降雨が例年より多かったため寒い日が続き,飛散開始時期が遅くなりました.また,スギ・ヒノキ花粉飛散量も甲府地区では697.7個/cm2と,かなり少ない飛散量でした.
大久保 東京は千代田区1,260個/cm2,八王子市1,660個/cm2など,都内における2010年春のスギ・ヒノキ花粉飛散量は,過去10年平均の約4分の1でした.
大橋 関西では,ここ4年ほど少量飛散が続いており,2010年春は飛散しているのかどうかさえ分からないような状況でした.しかし,2010年夏の日照時間と平均気温,また,2010年春の花粉飛散量が非常に少なかったことなどから,2011年春は前年比5~10倍の大量飛散になると予測されています.
大久保 2010年6~8月の日本全国の平均気温は,1876年の観測開始以来,過去113年間で第1位の高い記録でした.地域平均気温も多くの観測所で最高記録を更新しており,北・東日本では第1位,西日本は第4位と,高温の記録となっています.
大橋 東京では真夏日(日中の最高気温が30度以上)の合計日数が過去最多の71日,猛暑日(最高気温が35度以上)も2週間ほどあり,暑い夏だったようですね.
岡本 千葉市では,日照時間と最高気温が2005年を上回りました.また,例年の同じ時期よりスギ雄花がたくさんついているため,大量飛散の可能性が予想されます.
大久保 東京も,2011年は2,000個/cm2を下回る地域はなく,山沿いでは1万個/cm2以上の地域も出てくるという予測です.
岡本 東京では,2004年春は少量飛散でしたが,2004年夏の真夏日は70日となり,2005年春は大量飛散でした.同じように考えると,2010年春の飛散量が少なく,2010年夏の真夏日は71日ということからも,2011年春の飛散量は多いと考えられます.
大橋 気象条件から考えると,スギ雄花がかなり成長していると考えられるため,2011年春は大量飛散と予想されるわけですね.花粉の飛散開始時期については,冬の気温予想が平年並みかやや低めとのことなので,例年並みかやや遅くなる見込みといわれています.
 2011年春は,今までになかったような大量飛散が予測されているという点を踏まえ,大量飛散時における花粉症治療について考えていきたいと思います.

花粉症治療における鼻噴霧用ステロイド薬の位置付け

大橋 例年は鼻水とくしゃみだけの患者でも,大量飛散年には鼻閉も強く出ることが考えられます.この場合,どのような薬物療法を行いますか.
大久保 まずは,その患者が毎年最も困っている症状をターゲットにして治療を行います.たとえば,鼻水で困っている場合は,第2世代抗ヒスタミン薬による初期療法を行います.そして大量飛散が予想される場合は,鼻噴霧用ステロイド薬を早めに追加するようにします.
大橋 大量飛散が予想される年は,初期療法の段階から併用していくということですか.
大久保 それでも良いと思いますが,大量飛散予想はあくまで予想ですので,別の症状が少しでも出たときに併用を開始すれば良いと考えています.また,大量飛散により鼻閉が強く出る場合は,初期療法として抗ロイコトリエン薬を用いてから鼻噴霧用ステロイド薬を併用します.鼻閉のほかにくしゃみや鼻水が出てきたら第2世代抗ヒスタミン薬を併用するなど,患者の病型にあったストラテジーを組む必要があります.
岡本 2005年春には中高年者にも新規発症患者が多くみられ,また,寛解あるいはほとんど症状がなくなっていた人が再燃することも多かったです.ですから,大量の花粉飛散があれば2011年春も同様の患者が増えると考えられます.特に新規発症患者は初めての来院が遅れることも考えられますし,症状が悪化してから受診する患者が増えることも想定されます.
増山 数年前に実施した第2世代抗ヒスタミン薬と鼻噴霧用ステロイド薬の併用療法の試験結果では,充全型にも,くしゃみ・鼻水型にもよく効いたため,この2剤の併用が標準的治療になるだろうと思っています.
 一方,当大学では2007年から鼻噴霧用ステロイド薬を先行させる治療を行っていますが,抗炎症効果が期待され,ピーク時の症状も抑えることができます.治療の順番は今後の検討課題ですが,大量飛散時は重症化することが分かっているため,抗炎症効果のある薬剤を最初に使う選択肢もあると考えています.
大久保 大量飛散が予想される場合は鼻噴霧用ステロイド薬による初期療法も1つの治療法であると,私も考えています.国際的なアレルギー性鼻炎の診療ガイドライン「ARIA」(Allergic Rhinitis and its Impact on Asthma)にも,重症・最重症時の第一選択薬は鼻噴霧用ステロイド薬とありますし,日本のガイドラインでも,重症・最重症患者には鼻噴霧用ステロイド薬の使用が記載されていますから,患者ごとに治療法を変えていく必要があります.
大橋 従来のように第2世代抗ヒスタミン薬の初期療法に鼻噴霧用ステロイド薬を併用する方法と,鼻噴霧用ステロイド薬の初期療法に第2世代抗ヒスタミン薬を併用する方法において,違いはありますか.
増山 多くの症例で扱っているわけではないのですが,花粉飛散量が少量でも,鼻噴霧用ステロイド薬先行の方がピーク時の症状を抑える可能性が高いと感じています.しかし,QOLについては定かではありません.また,鼻噴霧用ステロイド薬の使用にあたっては,コンプライアンスの問題を考える必要があります.

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