「要約」2分法的類型を定型とする観点からは, 双方の中間領域あるいは双方のいずれにも還元できない非定型とされる領域はさまざまな呼称で感情病と統合失調症性精神病の間に包摂されてきた. その呼称とは, 統合失調感情精神病, 辺縁精神病, 類循環病, 非定型精神病, 統合失調症様状態, 仏語圏の妄想勃発である. 本論では2分法の臨床類型を疾病単位の代理物として, この領域を躁うつ病か統合失調症かに還元する立場も, いずれにも還元できない独自の疾病分類学的単位とみなす立場も, 裏付けに欠けることを指摘した. そのうえで感情病性症候群から統合失調感情病性中間領域を経て統合失調症症候群へと至る連続体という精神病理学的意味での単一精神病の観点の中で, 定型病像を含めて非定型な諸精神病像が位置づけられることを論じた. 特に非定型な諸病像という可変性のある急性態の基本的な連続性, 共通性の記述に単一精神病論という認識方向が寄与しうることを評価した.