要約  抗NMDA受容体脳炎は若年女性に好発する自己免疫性脳炎であり,NMDA受容体に対する細胞膜抗体を介して発症する。卵巣奇形腫に合併することが多いが,男性例や非腫瘍合併例も報告されている。発症初期に不安,抑うつ,幻覚妄想などの精神症状を呈することが特徴であり,その後は意識障害,不随意運動,けいれん発作,中枢性低換気と重篤な経過をとる。古典的な傍腫瘍性辺縁系脳炎と異なり,腫瘍切除や免疫療法などの治療に反応し,寛解までに長期間を要することはあるが予後は比較的良好である。精神症状の特徴としては離人体験,死や霊に関する妄想,常同言語などが挙げられる。精神科を受診することが多く,統合失調症や解離性障害などの精神疾患との鑑別が必要になる。