要約  脳炎を精神科診療で日常的に診ることは稀となった。ただ,精神症状で初発するウイルス脳炎はときにみられるため,精神科救急の観点からは今なお重要な疾患である。本稿では,本邦で報告された精神症状で初発したウイルス脳炎例を集めて,全体像を概観した。後半は,最も頻度の多い脳炎である単純ヘルペス脳炎(HSVE)を取りあげた。HSVEの症状,頭部MRI・脳波・髄液所見,診断,治療について検討した。特に診断については詳しく述べた。HSVEは,早期に治療開始するか否かが予後に直結する疾患であり,強く疑った場合には,診断確定を待たずに治療を開始することが肝要である。