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統合失調症様症状をきたす脳神経疾患

ビタミンB 群欠乏症

Vitamin B deficiency

新井誠糸川昌成

Schizophrenia Frontier Vol.12 No.1, 26-31, 2011

要約
 適切な栄養素の摂取は,健全な身体活動を営み,健康の礎石を築くものである。一方で,栄養不足は免疫系の減少や各種疾患の感受性増大,心身発達の障害などを引き起こしかねない。糖尿病や心疾患などの発症には,遺伝的な素因に加えて栄養学的諸問題を内包している。栄養摂取における消化・吸収・貯蔵・代謝など何らかの機能的不全,あるいは栄養バランスの乱れなどは身体に対し重大な障害を招く場合がある。
 本稿では,ビタミンの歴史的背景と生理機能について述べ,ビタミンと疾患との関わりについて概説し,統合失調症様症状をきたすビタミン欠乏症についても紹介した。また,ビタミン欠乏を伴う統合失調症の自験例を紹介し,統合失調症の精神的不調からの回復に向けた治療薬・予防薬としてのビタミンB6適応の可能性についても述べた。

Key words
Nutrition,栄養学,ビタミン,遺伝子,ストレス

はじめに

 糖質,脂質,タンパク質,ビタミン,ミネラルといった栄養素は生体にとって特有の生理機能を有し,これらの過不足はさまざまな障害を引き起こしかねない(図1)。

生活習慣による栄養素の欠乏や過剰摂取,あるいは身体的または精神的なストレスの増大は,糖尿病や高血圧性疾患,脳血管疾患,虚血性心疾患などの発症にも関与している。
 厚生労働省による「主要な傷病の総患者数」の平成20年度調査(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/08/index.html)では,糖尿病が2,371,000人,高血圧性疾患が7,967,000人,脳血管疾患が1,339,000人と今後,ますます増加していく可能性が高い。健康増進法(平成14年法律第103号)に基づき,国民の健康増進の総合的な推進を図るための基礎資料を得ることを目的に実施されている「国民健康・栄養調査」(厚生労働省平成21年度調査:http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html)では,習慣的な朝食の欠食やメタボリックシンドロームの予防・改善のための具体的実践の欠如なども指摘されている。また,健康な個人または集団を対象として,国民の健康の維持・増進,生活習慣病の予防を目的に,エネルギーおよび各栄養素の摂取量の基準を示すものとして,「日本人の食事摂取基準」(2010年版)(厚生労働省:http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/sessyu-kijun.html)が発信されている[独立行政法人国立健康・栄養研究所(http://www.nih.go.jp/eiken/)からも健康や栄養についての情報が発信されており参照されたい]。したがって,健康福祉の観点から,糖尿病などの疾患に加えて精神科医療においても栄養学を取り入れた科学的知見の集積,予防医学への還元,テーラーメイド医療への応用を推進することが重要と思われる1)。

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