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統合失調症様症状をきたす脳神経疾患

橋本脳症・甲状腺機能異常

Hashimoto’s encephalopathy and thyroid dysfunction

新谷孝典福原竜治上野修一

Schizophrenia Frontier Vol.12 No.1, 21-25, 2011

要約
 甲状腺機能異常によって精神障害が起こることは稀ではなく,臨床上必ず検討しておくべき症状性精神障害の代表である。一般に甲状腺機能異常によって起こる精神障害は,意識障害や気分障害様の臨床症状を呈すが,橋本脳症は,甲状腺に対する自己免疫障害から起こる珍しい脳症であり,甲状腺機能異常は軽度であるにもかかわらず,痙攣,意識障害,精神病症状,認知機能障害などの精神症状および不随意運動や小脳失調などの神経症状をきたす。臨床的には,甲状腺に対する比較的高い自己免疫抗体価は示すものの,診断を確定するための典型的な所見を呈しないため,診断に難渋する事例が多く,注意が必要である。しかし,一方で,副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬への反応は良好であるため,適切な診断と治療により,その予後を劇的に改善できることもわかっている。本稿では,橋本脳症の特徴について,精神症状に焦点を当て,自験例を交え概説したい。

Key words
橋本脳症,甲状腺機能異常,症状性精神障害,ステロイドパルス療法,粘液水腫性脳症,甲状腺中毒性脳症

はじめに

 甲状腺疾患は内分泌疾患のなかで最も頻度の高い疾患の1つであり,甲状腺機能異常により意識障害,痙攣,認知機能低下,精神症状,運動失調などの神経精神症状を伴いやすいことが知られている1)-3)(表1)。

 橋本病は甲状腺に対する特異的自己免疫疾患であり,それに伴う精神症状の多くは甲状腺機能低下によるものとされていた。しかし,1966年にBrainらが橋本病に合併した痙攣,脳卒中様発作,ミオクローヌスを伴う急性もしくは亜急性の脳症を報告4)して以来,甲状腺機能異常の有無に関係なく意識障害や精神症状,認知機能障害,痙攣,不随意運動などを呈する病態が明らかになり,橋本脳症と呼ばれている1)3)-12)。
 橋本脳症では一般的に,抗甲状腺抗体が陽性で無症候性の甲状腺機能低下状態であることが多く,髄液タンパク質は高値であり,非特異性な脳波異常が認められる1)5)-11)。橋本脳症は診断が困難なことが多いものの治療反応性は良好であり1)3)5)-11),適切な治療により予後を改善しうる疾患である。

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