要約
多発性硬化症は多彩な神経症状を時間的,空間的に増悪・寛解を繰り返しながら認める脱髄性疾患であるが,その経過中に精神症状を呈することが知られている。精神症状は睡眠障害,多幸性,易刺激性,抑うつ,不安,焦燥,ヒステリー,精神病症状など多彩な症状を呈する。特に精神病症状は幻覚,妄想,考想伝播,させられ体験,思考障害など統合失調症に類似の症状を認め,好発年齢も近いことからしばしば両疾患の鑑別を要することがある。多発性硬化症の診断には神経症状の評価や髄液検査,画像検査などを総合的に評価して行い,また統合失調症との鑑別を行う。治療はステロイド療法を行い,必要に応じて抗精神病薬の投与を行う。多発性硬化症の精神病症状はときに統合失調症との鑑別が難しい例もあるため,常に両疾患を念頭に置いた診断・治療にあたることが重要であると考える。
全文記事
統合失調症様症状をきたす脳神経疾患
多発性硬化症における精神病症状
Psychotic symptoms in multiple sclerosis
掲載誌
Schizophrenia Frontier
Vol.12 No.1 11-15,
2011
著者名
北村聡一郎
/
岸本年史
記事体裁
特集
/
症例
/
全文記事
疾患領域
精神疾患
/
神経疾患
診療科目
神経内科
/
精神科
媒体
Schizophrenia Frontier
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。