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Review(再生医療)

脊椎脊髄病治療の現状と展望―脊髄損傷を中心に―

大村威夫松山幸弘

再生医療 Vol.20 No.1, 34-43, 2020

米国において脊髄損傷は年間100万人あたり54人が発症し,世界保健機関(World Health Organization:WHO)は世界中で250,000〜500,000の脊損が発生していると予測している。
脊損の原因としては,交通事故,転落,転倒の順に多く,発症年齢は20歳と60歳の二峰性を示し,損傷高位は頚髄60%,胸腰髄40%と報告されている。
末梢神経と異なり,中枢神経は神経損傷後の軸索再生は極めて困難である。その理由として末梢神経では神経損傷後,神経細胞がactivating transcription factor3(ATF3),small proline rich protein 1A(SPRR1A),heat shock protein family B member1(HSPB1),signal transducer and activating transducer3(STAT3),early growth response1(EGR1)などの再生に必要な転写因子を含むregeneration associated genes(RAGs)を共発現し神経細胞自体のintrinsic growth capacityを増強する1)(図1)。また外因性の要素としては,Schwann細胞が神経再生因子を産生することにより再生軸索を誘導する2)。一方,中枢神経では神経細胞が再生に必要なRAGを共発現せず,外因性要素としてグリア細胞がreticulon4(Nogo),oligodendrocyte-myelin glycoprotein(OMgp),myelin-associated glycoprotein(MAG),chondroitin sulfate proteoglycans(CSPGs)などの阻害因子を産生し,軸索再生を抑制する3)。さらに視神経損傷後には網膜神経節細胞の50〜90%が細胞死に陥いるため4),中枢神経環境下での神経再生は極めて困難である。
したがって,脊髄損傷をはじめとする脊髄疾患の治療戦略としては
#1.神経細胞自体において内因性増殖能(intrinsic growth)を増加させること,
#2.グリア細胞において神経栄養因子を発現させること,
#3.グリアにおける再生阻害因子の抑制,
#4.神経細胞の細胞死抑制,が挙げられる。
「KEY WORDS」脊髄損傷,脊髄再生,骨髄間葉系細胞,iPS細胞,Muse細胞,肝細胞増殖因子

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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