OPINION
「アンメットメディカルニーズに応える」とは?
掲載誌
再生医療
Vol.19 No.1 11,
2020
著者名
佐藤正人
記事体裁
連載
/
抄録
疾患領域
再生医療
診療科目
整形外科
媒体
再生医療
アンメットメディカルニーズとは何か。それは画期的な治療薬や手術療法等の開発だと長年信じてきた。ペニシリンをはじめとする抗生物質等の開発,病気の伝播を止めるワクチンの開発,そして最近ではC型肝炎を完治させる治療薬や第4のがん治療に道を開いた免疫チェックポイント阻害薬のようなものをいうものだと思っていた。しかしながら,私の専門とする整形外科(運動器)領域での再生医療・細胞療法のこのところの大きな変化をみていると,患者が待ち望みながら実施できなかった領域の治療も含まれるのではないかと感じてしまう。つまり,治療効果の大小よりも患者の期待の大きさが圧倒的に勝っていると,多くの患者にとってそれはアンメット領域なのだ。しかし少し考えると,これではサプリメントと同じではないのかと自問してしまう。患者の期待は大きいので,こうした製品はビジネスとしては成り立つかもしれないが,果たしてこのようなレベルの話でよいのか。以前,本コラムで高橋政代先生が「臍帯血バンク細胞無届投与事件を受けて」というタイトルで寄稿されている。そのなかで「再生医療という言葉は罪作りな言葉である。(中略)再生医療は一般の人々に魔法の治療と誤解されているきらいがある。研究段階から公にすることは難病に苦しむ人々に希望を与えるが,一方で過剰な期待(残酷な希望)を与えることになりがちである」と述べられている。まさに,こうした患者たちを日常的に診ている医師ならではの至言である。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。