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Review(再生医療)

腸管オルガノイド研究の進歩とその展望

鶴田覚阿久津英憲

再生医療 Vol.18 No.3, 30-49, 2019

生体の組織は動的ダイナミズムのなかで,組織恒常性が維持され組織特異的な機能を発揮している。そして,その組織再生および恒常性維持には組織特異的な幹細胞が基軸となり,その動的ダイナミズムを支えている。組織,器官発生の研究のために特定の初期器官発生(Organogenesis)を模倣するコンセプトのもと始まったオルガノイド(Organoids)研究は,発生学の分野だけにとどまらず「試験管内で創生される一つの臓器」として疾患研究や創薬,再生医療におけるソースとしての役割が期待される1)
オルガノイドの厳密な定義は,特定の組織もしくは器官を対象として,①構成する特異的細胞種が複数存在する,②組織構造が立体構造上の類似性を持つ,③器官特異的な機能を有するという条件を満たすものである2)。さらに,広義では特定の組織もしくは器官を標的とした上で複数種の細胞を有する細胞塊(スフェロイド)に対してオルガノイドと呼ぶ場合もある。
現在,オルガノイド技術は脳,腸管,肝臓,腎臓など様々な組織,器官において応用されている。これらの先駆けとなった研究としてEirakuらによる自己組織化による三次元組織作製3)4)の他,Clevers研究室のSatoらによる腸管オルガノイド研究5)がある。腸管では組織幹細胞の存在とその動的な再生機序が早くから見い出され,組織幹細胞と幹細胞ニッチに関する研究を基盤に粘膜上皮オルガノイド作製が行われた。胚性幹細胞(embryonic stem cells;ES細胞),および人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell;iPS 細胞)などの多能性幹細胞の発見および研究が進むにつれて(図1A~C),オルガノイド研究は世界的にみてもさらなる発展を遂げてきた。
本稿では,現在までのオルガノイド研究開発の潮流を考える上で重要なキーワードとなる「自己組織化(self-organization)」に関して概説し,発展が著しい腸管オルガノイドを中心にオルガノイド研究の変遷と現在期待される医学応用の可能性を紹介する。さらに,オルガノイド研究が現在直面する課題について議論したい。
「KEY WORDS」自己組織化,組織幹細胞,多能性幹細胞,腸管オルガノイド

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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