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患者まで届いている再生医療

歯髄・象牙質再生治療の現状

中島美砂子庵原耕一郎

再生医療 Vol.18 No.1, 34-39, 2019

超高齢社会での一億総活躍の実現には,健康長寿者を増加させる政策が非常に重要と考えられる。8020運動(80歳で20本の歯を残す運動)達成者は未達成者よりも自立して健康である人が多いことから,歯の健康を維持し長持ちさせることは全身の健康の維持に繋がると考えられている。また,8020運動達成者は医療費が20%も安く要介護率も低い。よって,歯の健康維持により高齢者の全身の健康が維持され,要介護を減少させ,さらには医療・福祉経済の安定化が図れる可能性がある。現在,歯を失う原因は歯根破折を含めたう蝕によるものが約半分近くを占めている。無髄歯の抜歯は全体の約60%を占め,歯髄を抜くと歯を失う可能性が増加する1)。歯の平均寿命は現在約60歳であり,一生自分の歯で咬むことを考えると歯の寿命は20年以上高める必要がある。8020運動達成者は2016年時点ですでに50%に達しており,現在日本歯科医師会では,さらに健康長寿の支援活動として,歯喪失により口の機能が低下して虚弱になる「オーラル・フレイル」の予防を啓発している。すなわちオーラル・フレイルは,低筋力や低身体機能などの生活機能の低下を招き,ひいては要介護状態に導くことが懸念されている2)。よって,従来のう蝕・根管治療を改善し歯の寿命を高めることは,オーラル・フレイルの予防,健康長寿に繋がると考えられる。
従来の歯髄炎の治療法では,痛みをとるために抜髄し,人工物で根管充填するため,歯髄本来の歯の維持機能,すなわち歯髄の防御反応,感染抵抗力,知覚等が失われてしまう。根管治療の予後は,治療の既往がなければ90%以上であるが,再治療を重ねるにつれ予後は悪化する。特に根管治療の失敗の原因の多くは歯根破折といわれている。よって,抜髄すると最終的に抜歯に至る可能性が増加する。筆者らは,最小限の切削で残存歯質の量を高め,細菌漏洩を完全に防止し,しかも,残存歯質の性状および機械的強度を変化させない理想的な根管治療・充填法として,歯髄幹細胞移植による歯髄・象牙質再生治療法の開発を行ってきた。
「KEY WORDS」抜髄,感染根管,歯髄・象牙質再生治療,歯髄幹細胞,自家移植

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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