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Review(再生医療)

強皮症と皮膚再生

浅野善英佐藤伸一

再生医療 Vol.17 No.1, 34-47, 2018

全身性強皮症(systemic sclerosis:SSc)は皮膚および内臓諸臓器の線維化と血管障害を特徴とする全身性の自己免疫疾患である1)。その臨床症状は,皮膚硬化,間質性肺疾患,胃食道逆流症,吸収不良症候群,心線維化,肺動脈性肺高血圧症,強皮症腎,皮膚潰瘍と多岐にわたる。皮膚に限れば,皮膚硬化と皮膚潰瘍がADLやQOLを障害する主要な症状であり,これらの症状をいかにコントロールするかが臨床上重要となる。皮膚硬化に対しては,従来,副腎皮質ステロイドやシクロホスファミドに代表される免疫抑制薬が用いられてきたが,近年トシリズマブ(ヒト化抗IL-6受容体抗体)の有用性が示唆されており2),現在第Ⅲ相国際共同治験が進行中である。皮膚潰瘍に対しては,ボセンタン(エンドセリン受容体拮抗薬)が手指潰瘍の新規発症を予防する効果がある3)4)。さらに,ボセンタンは血管内皮細胞の形質を変化させることでSScの血管障害に対して疾患修飾作用を発揮し5)6),本症で特徴的にみられる爪郭部毛細血管の構造異常を改善させる7)。このように治療の進歩はみられるものの,現時点ではSScの皮膚病変を完全に正常化させる治療はない。そのようななか,幹細胞や多能性細胞を利用した再生医療もSScの皮膚硬化および皮膚潰瘍に対する治療の選択肢となる可能性が示唆されており,新たな試行的治療も試みられている。本稿ではSScの皮膚病変に対する再生医療について,現在までに得られている知見を概説する。
「KEY WORDS」自家末梢血幹細胞移植/骨髄由来間葉系幹細胞/脂肪細胞由来幹細胞/単球由来多能性細胞/血管新生/免疫抑制

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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