変形性膝関節症は膝関節軟骨の変性を基盤とした疾患であり,その病態は複雑なため,いまだ根本的な治療薬は開発されていない。近年,再生医療による新たな治療が様々な分野で試みられており,なかでも間葉系幹細胞は,その安全性と高い増殖能・多分化能から,臨床応用が最も期待される細胞集団である。我々は,滑膜由来の間葉系幹細胞(以下,滑膜幹細胞)1)が,他の組織由来の間葉系幹細胞よりも増殖能と軟骨分化能に優れていること2),その遺伝子プロファイルが骨髄,筋肉,脂肪由来の間葉系幹細胞よりも軟骨,半月板,靭帯由来の間葉系幹細胞に類似することを報告した3)。また,ウサギやブタの骨軟骨欠損に滑膜幹細胞を投与して軟骨が再生することを証明し4)5),現在臨床応用を行っている6)。しかし,局所の軟骨欠損と広範な軟骨病変や滑膜炎を伴う変形性膝関節症とでは,その病態は大きく異なる。近年,変形性関節症モデルに対して幹細胞の関節内投与を単回行い,軟骨変性を抑制したという報告が散見されるが7)8),慢性の病態に対する単回の幹細胞治療では,長期の効果を期待することは難しい。そこで我々は,ラット変形性膝関節症モデルを用いて,滑膜幹細胞の定期的関節内投与の有効性を検討し,投与した滑膜幹細胞の細胞動態や,その役割について解析した。
「KEY WORDS」間葉系幹細胞,滑膜,変形性膝関節症,定期的投与,栄養因子
「KEY WORDS」間葉系幹細胞,滑膜,変形性膝関節症,定期的投与,栄養因子