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OPINION

治癒とはそもそも自己組織再生である

高橋淳

再生医療 Vol.15 No.3,5, 2016

「分ける」から「つくる」へ。山中伸弥教授が「ES細胞を分けて調べる」から「ES細胞をつくる」へと研究方針を転回したとき,iPS細胞(その時はまだ存在していなかったが)の運命は決まった。この転回はコペルニクスやカントを持ち出すまでもなく,人類がこれまで辿ってきた道でありこれからも辿るであろう道だ。すなわち,iPS細胞は生まれるべくして生まれた。そしてこの「ES細胞をつくる」という方針の根拠となったのは,体細胞にも遺伝子がすべて揃っているというジョン・ガードン卿の発見であった。周知の通り,下等生物は再生能力が高く自律的な自己組織再生が可能である。ヒトでは皮膚や腸など一部の細胞に新陳代謝がみられるものの,自己組織再生能力は極めて低い。しかし,体細胞にもすべての遺伝子があるという事実は自己再生能力の名残であり可能性でもある。iPS細胞の出現は,ヒトの自己再生能力を外的な現象として認識できるようにしたのだ。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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