「はじめに」関節軟骨は骨端の表面を覆い,衝撃の吸収や円滑な関節運動を担っている。関節軟骨は軟骨細胞とⅡ型,ⅩⅠ型コラーゲンおよびプロテオグリカンなどからなる豊富な細胞外基質で構成される硝子軟骨でできている。関節軟骨は血管を有しておらず,自己修復能が乏しい。そのため,外傷や加齢などにより軟骨組織が損傷すると,元の組織である硝子軟骨では治らず,Ⅰ型コラーゲンに富んだ線維軟骨で修復される。病変が進行すると骨が露出し,疼痛や炎症が生じ,変形性関節症に至ることも少なくない。現在臨床で行われている修復方法の一つとして自家軟骨細胞移植手術(autologous chondrocyte implantation:ACI)がある1)2)。このACIは,患者の非荷重領域の健全な軟骨から軟骨細胞を採取し,生体外で拡大培養後欠損部へ移植する方法である。ACIは疼痛の緩和など良好な成績をおさめているものの,健全な軟骨組織を損傷する,2回手術が必要,などの問題点があった。
「KEY WORDS」iPS細胞,軟骨細胞,硝子軟骨,再生医療