Review(再生医療)
造血幹細胞と代謝調節
Hematopoietic Stem Cells and Hematopoietic Homeostasis
再生医療 Vol.14 No.1, 18-29, 2015
「はじめに」造血幹細胞は,前駆細胞を供給する能力と,一方で,自分自身を産生する自己複製能の二つの能力を兼ね備えており,そのバランスを保ちながら,恒常性を維持している。このバランスは,生体内微小環境(ニッチ)によって支えられている。マウス発生・発達期の造血幹細胞は,活発に細胞分裂をしているのに対して,個体の発達が完了した生後8週齢以後は,そのほとんどが細胞周期から逸脱したG0期で存在している。また,造血幹細胞の機能不全を示す様々な変異マウスで,細胞周期の異常を来していることが観察されており,静止状態に留めておくことは,幹細胞の未分化性維持にとって重要な意味があると推察される。造血幹細胞の代謝状態は,静止状態に留まる時期と活発に分裂している時期では大きく異なると考えられるが,それらの代謝状態の変化は単なる細胞周期に応じた結果なのか,あるいは代謝調節自体が幹細胞機能を制御しているのか,興味が持たれるところである。
「Keywords」造血幹細胞,低酸素,解糖系,酸化的リン酸化,栄養センサーシグナル
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。