「はじめに」ある分化細胞から幹細胞の状態を経ることなく,別の分化細胞へと直接誘導する方法は目的の細胞種を作製する新規手法として,大きな可能性を秘めている。これまでに,細胞腫特異的な転写因子の過剰発現による繊維芽細胞からの神経細胞,心筋細胞,肝細胞,血液幹細胞,神経前駆細胞の直接誘導が報告されている1)-6)。元の細胞の特性を抑えることは細胞運命転換の特徴として認識されているが,その重要性やこの過程にある分子基盤はほとんどあきらかとなっていない7)8)。複数の心筋特異的転写因子の組み合わせ[Gata4/Mef2c/Tbx5(GMT),Gata4/Mef2c/Tbx5/Hand2(GHMT),Mef2c/Myocd/Tbx5]によりマウス線維芽細胞から心筋様細胞(induced cardiomyocyte-like cells;iCMs)が誘導されることが報告された1)9)10)。
「KEY WORDS」心筋細胞,microRNA,細胞直接誘導,Snai1,転写因子