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その他

山中伸弥先生ノーベル医学・生理学賞受賞を祝して

澤芳樹

再生医療 Vol.12 No.1, 13-13, 2013

人の生命が永遠でない限り不死に対する人類の憧憬は, 医師の情熱を駆り立て, 病に対する戦場である医療現場に向かわせ, その戦いの積み重ねが医療の進化をもたらしてきた. 医療者は常に新しい医療を武器として戦いの戦略を編み出し, 新たな敵に挑もうとする. 本能である. すなわち医療には常にイノベーションとパラダイムシフトが繰り返されてきた, そしてこれからも繰り返していく. 今, 新たなイノベーションが興ろうとしている. 山中教授が発見したiPS細胞である. これまでの医療を覆す革命的発見である. 生命科学のメカニズムを説き明かす大変大きな発見であるとともに, これまで治療法がなかった難病の患者さんにも光が届く可能性が大いに期待され, 発見から6年でノーベル賞を受賞された. しかし, まだ安全性も含めて治療への応用はこれからであるが, コンセンサスのない先端医療は, 一歩間違えばマスコミの大批判と, 医療そのものへの不信感へとつながる. 日本におけるiPS細胞プロジェクトがぶち壊しになる可能性は, 心臓移植の例を見れば明らかであろう. 昨年6月12日~14日, 第11回再生医療学会会長を仰せつかり, そのときの市民公開講座にて満席状況で山中先生にご講演をいただいた. さらに招請講演には山中先生にご推薦いただいたJohn Gurdon先生にもご講演いただいたが, 考えてみると今年度のノーベル医学賞のお二人ともに半年前にご講演いただけたということで, まれに見る学会を開催させていただき, 大変光栄であった. 山中先生と, 心筋再生にiPS細胞を応用する共同研究を始めて6年が経つ. 今回の山中先生の受賞に, 私も感動した. と同時に, 心臓血管病で苦しむ患者さんに, 何とか安全で有効なiPS細胞による心筋再生を迅速に届けることを思うと, 責任感に武者震いが興った. 山中先生も同じ思いで, 受賞されて以後は実用化のことで頭がいっぱいに違いない. まずは, 山中先生にご祝辞を申し上げると同時に, 山中先生と一緒に今後も臨床応用に向けた研究開発を続け, iPS細胞による普遍的な治療を達成させたい.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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