iPS細胞と癌幹細胞の相互理解
特集にあたって
再生医療 Vol.9 No.2, 13, 2010
再生医療の基軸の1つ組織幹細胞の役割が, 当該組織を構成する各種細胞を生み出してその組織の構築あるいは再構築を可能とする能力をもって存在し続けることと位置付けられるならば, 癌組織を再構築させる能力をもち続ける細胞を癌幹細胞とみることができる. 無制限ともいえる分裂を繰り返す癌細胞から構成される癌組織は, 単一な細胞集団ではなくて一部の自己複製能をもった細胞から出発する階層性をもった集団である, という点がこの癌幹細胞の概念上のポイントであり, 治療標的としての重要性を示唆するゆえんでもある. 一方, 癌幹細胞の起源はというといまだ議論を要するのが現状で, 正常組織に存在する幹細胞あるいは, 幹細胞から分化を予定した段階になって間もなくの前駆細胞, 分化途上にある細胞, さらには成熟細胞を起源としているなど, さまざまな見解が報告されている. 成熟細胞あるいは, 分化のコミットメントを受けた前駆細胞, または分化途上にある細胞が癌幹細胞化する過程は, 幹細胞の性質をもつ細胞へのリプログラミングと捉えることができ, この点で, 分化した細胞から多能性を有する細胞へと誘導して作製されたiPS細胞と, メカニズム上の類似性が推察される.
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。