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循環器領域における再生医療の現状と展望
Ⅰ.基礎 ES細胞・iPS細胞からの心筋細胞分化
掲載誌
再生医療
Vol.8 No.1 48-54,
2009
著者名
江頭徹
/
福田 恵一
記事体裁
特集
/
全文記事
疾患領域
循環器
/
再生医療
診療科目
循環器内科
/
心臓血管外科
媒体
再生医療
「はじめに」循環器領域において, 治療抵抗性の重症心不全への新たな治療法の開発は極めて重要な課題であると考えられる. 現在の根本的治療方法は心臓移植のみとされているが, ドナー不足や施設不足などの多くの問題点があり, 満足のいく治療法として確立していない. 近年, 幹細胞生物学の急速な発展により, 難治性の心不全の治療手段の1つとして再生医療・細胞移植医療が脚光を浴びている. 幹細胞は自己複製能と多分化能をもつ細胞と定義され, 難治性疾患に対する移植療法の供給源として期待されている. 成体には体性幹細胞(somatic stem cell)が存在し, 増殖と分化を繰り返し, 組織の恒常性の維持に関与していると考えられている. 心臓においても成熟した心筋細胞や血管構成細胞へ分化する幹細胞分画の存在が報告され, 心筋細胞移植ソースの候補として考えられている. また初期胚である胚盤胞の内部細胞塊から樹立された胚性幹細胞(embryonic stem cell:ES細胞)研究も盛んに行われており, その優れた増殖能や多分化能から臨床応用が期待されているが, 生命倫理的な問題や移植に伴う拒絶免疫などの重要な問題が実現への障壁となっていた.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。