ウイルスよもやま話
自然界に存在するウイルスについて
インフルエンザ Vol.22 No.4, 59-62, 2021
シリーズ「ウイルスよもやま話」の第13回目は,自然界に存在するウイルスについての話題です.
20~21世紀において,エボラ出血熱,エイズ(AIDS,後天性免疫不全症候群),鳥インフルエンザ,重症急性呼吸器症候群(SARS),中東呼吸器症候群(MERS)といった“新興感染症”が新たに人間社会に出現しており,国際的に大きな問題となっています.2019年末に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行の勢いはいまだに衰えず,2021年9月9日現在の世界保健機関(WHO)の発表によると,世界における新型コロナウイルスの累計感染者数は2億2,240万6,582人,死者数は459万2,934人にのぼっており,社会的,経済的に甚大な被害を引き起こしています.
新興感染症は,その多くが動物に由来する“人獣共通感染症(Zoonoses)”です(図1).人獣共通感染症は「脊椎動物とヒトとの間で自然に伝播しうるすべての病気あるいは感染症」と定義されています.COVID-19,エボラ出血熱,SARSの原因ウイルスの自然宿主は,野生動物であるコウモリであると考えられています.これらのウイルスは,ヒトに感染して重篤な症状を引き起こすことがありますが,自然宿主であるコウモリに感染しても何ら症状を示すことはありません.コウモリなどの野生動物がどのようなウイルスを保有しているのか,そのうちヒトに感染する可能性のあるウイルスがどのくらい存在するのか,などは不明なままです.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。