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巻頭言

パンデミックと公的機関の特徴

立川夏夫

インフルエンザ Vol.22 No.4, 5-6, 2021

2020年以前,パンデミックを起こす疾患は鳥インフルエンザと考えられていた.しかし現在新型コロナウイルス感染症が世界を席巻している.
このウイルスのパンデミックは長期化する様相を呈し,多くの希望的観測が破られているが,日本ではワクチンの効果が2021年11月時では期待がもてる状況にある.
しかし,この時点でいったん確認すべき課題がある.今までの1年半以上の経過の経験を整理することである.
現在の医療はevidence-based medicineを土台として展開している.しかしパンデミックの初期には当然エビデンスの集積はない.そのような段階=エビデンスが確立する以前の段階では,医療にかかわるものは公的機関の指針に頼らざるを得ない.問題は,指針を出すべき公的機関にとっても「エビデンスが欠落している」という事情は同等である.そのため公的機関はexpert opinionの方法として指針を出さざるを得ない.しかし,evidence-based medicineが追求された理由の1つは「expert opinion」があてにならないからである.ポイントは各公的機関には,その成り立ちから逃れられない特徴=偏向があることである.
実際に患者をみる立場としてはこれらの組織の特徴を知っておくことは非常に重要である.本来,この特徴=偏向は学問的に追求されるべき重要な問題であるが,現時点では当方の個人的な経験と意見を述べさせていただく.
特に注意すべきはWHO,米国CDC,厚生労働省である.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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