ウイルスよもやま話
新型コロナウイルスワクチンの開発状況について その1
インフルエンザ Vol.22 No.1, 53-57, 2021
発生から1年が過ぎたにもかかわらず,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は,いまだに世界中で猛威を振るっています.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の制圧は喫緊の課題であり,世界各国において,治療薬やワクチンの開発研究が急ピッチで進められています.2020年12月22日付の世界保健機関(WHO)の報告によると,臨床試験に入っているワクチンが61種類,さらに前臨床段階にあるワクチンが172種類存在します.臨床試験中のワクチンの内訳としては,組換え蛋白質ワクチンが18種類,ウイルスベクターワクチンが13種類,mRNAワクチンが8種類,DNAワクチンが8種類,不活化ウイルスワクチンが8種類,ウイルス様粒子(virus-like particle:VLP)ワクチンが2種類,弱毒生ワクチンが1種類です(図1).これらのワクチンのうち,開発が先行しているのは,米国のファイザー社とドイツのビオンテック社のmRNAワクチン「BNT162b2」,米国の国立アレルギー感染症研究所(NIAID)とモデルナ社のmRNAワクチン「mRNA-1237」,および英国のオックスフォード大学とアストラゼネカ社が共同開発しているアデノウイルスベクターワクチン「AZS1222」です.今回は,mRNAワクチンとアデノウイルスベクターワクチンの開発状況について,ご紹介します.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。