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巻頭言

薬って誰のためのもの

山下誠

インフルエンザ Vol.21 No.1, 5, 2020

インフルエンザ治療薬は国内では日本発薬3剤を含む7剤も認可されていて,世界でも類をみないインフルエンザ治療薬先進国である.治療薬選択のオプションの幅が広いこと自体にメリットはあろうが,薬剤の本当の姿が患者を含めた臨床現場に正しく伝わってこそ本当のメリットになるのだと最近特に痛感する.薬は本来患者の利益のためにあると信じるからである.
当然ながら研究者はそれぞれに異なる背景をもつが,自分の知識がすべてに優ると錯覚するがゆえに他の研究者にいう.曰く,あなたは「ウイルス学を知らない」,「臨床を知らない」,「薬学を知らない」,挙句に「インフルエンザを知らない」.加えてメーカーは「儲けることしか知らない」,メディアは「勉強することを知らない」.特に最近このようなかまびすしさを感じるのは,最新のインフルエンザ治療薬に対する薬剤耐性ウイルス発現頻度が従来薬に比べてきわめて高いという背景のもと,研究者,臨床医,メーカーがそれぞれの立場から発言し,メディアは中味を吟味することなく情報を垂れ流すのを感じるからである.ただ,この一連の姿勢には共通している点がある.薬は本来患者の利益のためにあるという姿勢が全く感じられない点である.ここでは,耐性ウイルスが発生した患者で罹病時間が延びる点に着目する.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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