専門家に聞くインフルエンザウイルス講座
H7N9亜型鳥インフルエンザウイルスの最新知見
掲載誌
インフルエンザ
Vol.19 No.1 61-65,
2018
著者名
小澤真
/
河岡 義裕
記事体裁
抄録
疾患領域
呼吸器
/
感染症
診療科目
一般内科
/
呼吸器内科
媒体
インフルエンザ
2003年11月以降,東南アジアや中国,エジプトを中心に,H5N1亜型高病原性鳥インフルエンザウイルスの感染者の報告が続いています.2017年6月15日現在の確定症例数は859名で,このうち死亡例は453名を数え,その致死率は50%を超えています.これまでのところ,効率的にヒト-ヒト感染を引き起こす伝播力(transmissibility)は獲得していないものの,そのヘマグルチニン(HA)の抗原性はH1N1亜型ならびにH3N2亜型の季節性インフルエンザウイルスのそれとは明瞭に異なることから,パンデミックを引き起こす可能性が懸念されています.そのため,日本を含む多くの先進国を中心に,万が一の事態に備えた「プレパンデミックワクチン(pre-pandemic vaccine)」の製造ならびに備蓄が進められていることは,本連載の第9回『インフルエンザパンデミックとパンデミックワクチン』でもご紹介した通りです.また,養鶏を中心に流行を繰り返していたH5N1亜型高病原性鳥インフルエンザウイルスの一部が野鳥へ飛び火し,従来から野鳥のあいだで流行していたさまざまな亜型の鳥インフルエンザウイルスとのあいだで遺伝子交雑,いわゆる「遺伝子再集合(reassortment)」を繰り返した結果,近年ではH5N2,H5N6,H5N8といった新しい亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルスが世界各地の鳥類から相次いで分離されています.国内においても,2014/2015年シーズンにH5N8亜型,昨シーズンはH5N6亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルスが,全国の家禽や野鳥,さらには動物園などの飼育動物に感染し,大きな被害をもたらしました.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。