現在日本では4種のノイラミニダーゼ(NA)阻害薬が使用されており,耐性ウイルスの出現について多くの関心が集まっている.NA阻害薬の効果の指標の1つとして50% inhibitory concentration(IC50)が測定されている.NA阻害薬耐性ウイルスではIC50の著しい上昇がみられる.これまで日本で流行したインフルエンザウイルスでIC50の著しい上昇がみられたのは,2008/2009年流行期に多数の患者がみられた,オセルタミビル耐性となるH275Y変異があるA(H1N1)であり,その際にはオセルタミビルの臨床効果が低下したことが確認されている.このウイルスの流行はその後はみられていないが,現在流行しているA(H1N1)pdm09の一部にIC50の著しい上昇がみられる.A(H3N2)とBでは,I C50が著しく上昇したウイルスの流行や,IC50の値に経年的な上昇傾向はみられず,耐性はみられていない.IC50値はノイラミニダーゼ阻害薬の臨床効果の評価に有用であり,サーベイランスの継続が必要であると思われる.
「KEY WORDS」インフルエンザウイルス,ノイラミニダーゼ阻害薬,50% inhibitory concentration(IC50),耐性