近年,新型インフルエンザウイルス感染症,エボラ出血熱など,人獣共通感染症が世界各地で発生し人類を脅かしている.人獣共通感染症リサーチセンターは,人獣共通感染症の包括的な研究・教育を行うために,2005年に世界で初めて設立された.医学,獣医学,薬学,工学,理学を基盤とする,微生物学,ウイルス学,免疫学,病理学,情報科学等の専門家が結集して新たな分野を創生し,研究・教育に取り組んでいる.センター設立に尽力されたリサーチセンター統括の喜田宏先生に,センターの沿革・概要,およびインフルエンザウイルスやワクチンに関する研究などについてお話を伺った.
「人獣共通感染症という新たな学術領域の創成」
―研究室の沿革についてご紹介ください.
喜田:人の医療は厚生労働省,家畜,家禽と蜜蜂の伝染病予防は農林水産省の管轄下にあるため,人獣共通感染症は研究・教育および行政のいずれにおいてもカバーされない狭間におかれ,包括的に研究・教育を行うための基盤はありませんでした.私は人獣共通感染症という新たな学術領域の創成の必要性を訴え続け,2005年4月1日に北海道大学に「人獣共通感染症リサーチセンター」が設置されました.