今回は,インフルエンザ流行の制御に成果を上げている地域の2つの介護施設の取り組みを紹介します.高齢者はインフルエンザを発症すると重症化してしまう可能性がほかの年齢層より高いとされています.多くの高齢者が集まる施設では,高い感染制御能力が求められますが,独特の難しさもあります.2016年の伊勢志摩サミットの地で実践されているノウハウについて考えてみましょう.

「志摩の里における感染対策開設から7年を振り返る」
公益社団法人地域医療振興協会志摩地域医療福祉センター
志摩市介護老人保健施設「志摩の里」介護看護部
原口悦子

「はじめに」介護老人保健施設の感染対策は質の高い感染管理が求められている.当施設は開設から7年が経過し,おかげさまでインフルエンザやノロウイルス,疥癬などの集団感染の発生はない.しかしほかの病院や施設などでそれらの集団感染が発生したと聞くと,自分の施設は大丈夫だろうかと平常心ではいられない.今回,愛知県立大学の清水先生と施設の感染対策についてお話する機会があった.先生と会話しながら開設から現在までを振り返ると,施設独自で特別な感染対策の工夫をしているわけではないことに改めて気づいた.