疫学(インフルエンザ)
インフルエンザ伝播動態の疫学研究への招待
インフルエンザ Vol.16 No.3, 43-49, 2015
インフルエンザの疫学に関する重要な科学的疑問点は,いまだに確実に解明されていないものが多い.ワクチン接種の有効性や免疫の持続などはもちろんだが,流行対策の有効性を考える以前に,毎年インフルエンザに何人の方が感染しているのか,日本では十分に明らかにされていない.また,異なるウイルス株がどのような重症化プロファイル(例:致命割合)に影響を与えているのかも疫学的に明らかでない.本稿では伝播動態にかかわる疑問点について,その研究手法と最近までに得られた研究成果をご紹介する.致命割合は,死亡前(計算前)にどのような状態が与えられたかによって推定値が大きく変動するため,最も理論的に頑健と考えられる感染者致命割合について紹介する.同指標の計算には超過死亡者数と血清疫学調査に基づく感染者数の推定を要する.社会医学上の要請に応じて理論的定義を明確にしつつ各指標を使用することが求められる.
「KEY WORDS」インフルエンザ,血清疫学,2次感染リスク,超過死亡,感染者致命割合
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。