要 旨
インフルエンザウイルスのN1亜型ノイラミニダーゼにおけるH274Y変異(274位のアミノ酸がヒスタミンからチロシンに変異)はウイルスのオセルタミビル耐性化をもたらすが,ウイルス自体の病原性は低下させる,とこれまでは考えられていた.しかし2007~2008年流行期以後,H274Y変異を保持する季節性H1N1ウイルスが瞬く間に優勢となってしまった.H274Y変異により細胞表面に発現するNAの量は減少するが,このようなウイルスにとっての不利益は,別の部位に生じる変異によって相殺されることを著者らは示した.実際,このような補填的性質をもつ2種類の異なる変異が,H274Y変異の蔓延に先駆けて季節性H1N1ウイルスにおいて発生していた.オセルタミビル耐性ウイルスが流行したのは,この2種類の変異が貢献したためと推察される.この過程を理解することは,ほかのインフルエンザウイルスのオセルタミビル耐性株の流行の可能性を予測するうえで有用である.
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海外文献紹介
Science 328:1272-1275, 2010
Bloom JD, Gong LI, Baltimore D:Permissive secondary mutations enable the evolution of influenza oseltamivir resistance.
掲載誌
インフルエンザ
Vol.12 No.2 86-87,
2011
著者名
木曽真紀
/
河岡 義裕
記事体裁
連載
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疾患領域
感染症
診療科目
一般内科
/
呼吸器内科
/
老年科
/
小児科
媒体
インフルエンザ
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