公衆衛生(インフルエンザ)
近年のH1N1型の症状経過とウイルス学的検討
―H1N1pdmを中心として―
インフルエンザ Vol.12 No.2, 45-51, 2011
2007/2008年(1群),2008/2009年(2群)のソ連型と2009/2010年(3群)のH1N1pdmの各H1N1型におけるオセルタミビル(Os)投与後の症状やウイルスの残存,H275Y変異を比較し,3群ではIC50も解析した.3群は1群と同様に2群よりも解熱は速やかであったが,咳などの症状は2群のみならず1群よりも残存する傾向にあった.またウイルス残存率は2,3群では15歳以下が16歳以上よりも有意に高かった.H275Y変異は2群以外に3群でも3例(1例は投与前,2例はOs投与後)に検出された.Os投与後の変異2例はIC50が投与後200倍以上になり,1例で発熱が遷延した.H1N1pdmではOs投与後,解熱は速いが特に小児ではウイルス排泄が長く,ウイルス残存例の一部(9%程度)ではH275Y変異が起きている可能性が示唆された.
KEY WORDS
■インフルエンザA/H1N1 ■H1N1pdm ■H275Y変異 ■IC50 ■オセルタミビル
はじめに
2008/2009年シーズンに出現したオセルタミビル耐性ソ連型では特に小児において同薬投与後も発熱が遷延し,解熱時間が延長したが1)2),2009年に出現した新型インフルエンザ(H1N1pdm)では,一転して解熱時間が短くなったことをわれわれは報告した3)4).しかし同薬投与後の症状やウイルスの残存,あるいは遺伝子変異,薬剤感受性(IC50)などについてはまだ十分に検討されたとはいい難い.今回はこの3シーズンのH1N1,すなわちオセルタミビル感受性ソ連型(2007/2008年),同耐性ソ連型(2008/2009年),H1N1pdm(2009/2010年)について,オセルタミビル投与例を中心に症状経過やウイルス学的な検討を行い,近年のH1N1を比較検討した.
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。