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疫学(インフルエンザ)

Pandemic H1N1の家族内感染―Seasonal Influenzaと比較して

廣津伸夫

インフルエンザ Vol.12 No.2, 31-37, 2011

 Pandemic(H1N1)2009は新型ウイルスというわりにはその流行は予想に反して小さかった.特に成人の罹患率は低く,これまでの季節性インフルエンザAの流行に比べると,乳幼児の感染も少なかった.一方,7~15歳までの小児では,高い罹患率とともに,重篤な呼吸器障害を合併し緊急入院を要する症例も多かった.呼吸器障害例からこのウイルスの病原性は小さいとはいえず,今後の流行状況では乳幼児にも同様の割合で重症例が出現する恐れもある.本稿では,家族内感染の観察から得られた知見をもとに,パンデミックウイルスの年齢による感染の偏りを検討し,今後の再流行への備えを考察する.

KEY WORDS
■Pandemic(H1N1)2009 ■家族内感染 ■家族発生率 ■家族内感染率 ■感染経路

はじめに

 インフルエンザに対する臨床家の役割は流行を阻止し,インフルエンザを制圧することである.ワクチン接種,早期診断,早期治療といった個々への感染対策を行うことによってある程度の流行拡大を抑制することは可能と思われるが,インフルエンザがヒトからヒトにうつる感染症であることを思えば,感染者を隔離し感染経路を切断するといった,対人関係における対策がさらに重要となってくる.このためには,感染経路,感染期間の把握が必要となる.筆者は,インフルエンザの流行の最小単位であり,しかも流行拡大に大きな影響を与える家族内感染の調査を2001年より行っているが,今回,パンデミックにおける家族内感染を調査することにより,パンデミックウイルスの特徴の一端が垣間みえたので報告する.

1 家族発生率と家族内感染率(家族内感染の定義と家族外からの紛れ込み)

 対象は,迅速診断キットにより陽性と認めた者とし,2009~2010年シーズンの新型インフルエンザ(pdmH1)の罹患者732名,および過去8シーズン(2001~2002年から2008~2009年シーズン)の季節性インフルエンザA(FluA)における罹患者1,642名とその家族である.
 家族内感染の定義は次のようにして行った.まず,シーズンごとに同一家族で発症したインフルエンザ罹患者を発症順にならべ,家族で最初に罹患した罹患者から後続の罹患者までの発症間隔をしらべた.次に,発症間隔に従い,12時間間隔で後続罹患者の発症数を観察した.その結果,経過とともに後続罹患者は減少し,8日以上の発症はきわめてまれであることがわかった(図1).

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