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巻頭言

抗インフルエンザウイルス薬の位置付け

岩田敏

インフルエンザ Vol.12 No.2, 5-7, 2011

 抗インフルエンザウイルス薬の適応については種々の意見があるであろうが,2009年に日本感染症学会の新型インフルエンザ対策委員会・診療ガイドラインワーキンググループはこれまで,新型インフルエンザの流行・蔓延に対していくつかの提言を行っている.

「新型インフルエンザ診療ガイドライン(第1版),(2009年9月15日)」1)のなかでは,「原則として,すべての病院と診療所がインフルエンザ患者の診療にあたることが新型インフルエンザ対策の要諦であり,ノイラミニダーゼ阻害薬の投与により,重症化を防ぎ入院や死亡を減らすことが最大の目標となる」と述べており,さらに「一般医療機関における新型インフルエンザへの対応について(第2版),(2009年12月25日)」2)においては「わが国での新型インフルエンザ感染による被害が少ないのは,患者の早期受診と早期治療開始によるものと考えられ,今後の蔓延期においても可能な限り全例に対する発病早期からの抗インフルエンザ薬による治療開始が最も重要である」とも提言して,抗インフルエンザ薬の重要性を強調している.またその後Writing Committee of the WHO Consultation on Clinical Aspects of Pandemic (H1N1)2009 Influenzaは2009年新型インフルエンザパンデミックの総括として,New England Journal of Medicineの総説3)のなかで,「ハイリスク患者に対しては,軽症(合併症なし)の場合はオセルタミビルもしくはザナミビルを早期に開始,重症患者・入院患者の場合はオセルタミビル増量・長期投与,ペラミビルの静脈内投与を行う.基礎疾患のない患者に対しては,臨床的な判断と抗ウイルス薬の供給に応じて,オセルタミビルもしくはザナミビルの投与を考慮し,発症後48時間以内の治療はリーズナブルである」と,基礎疾患の有無にかかわらず,状況に応じた積極的な抗インフルエンザウイルス薬の投与を推奨している.インフルエンザの治療は外来治療が基本であり,大部分の例は外来治療で軽快するが,基礎疾患のない健康な小児や成人が重症化してなかには死亡に至る例もあることから,その治療にあたっては基礎疾患の有無やその程度にかかわらず患者の重症度そのものが重視されるべきであると考える.
 一方,治療に使用される抗インフルエンザウイルス薬としては,オセルタミビル,ザナミビルに加えて,2010年1月に静脈内投与のペラミビル,2010年10月に吸入薬のラニナミビルが発売されたことにより,臨床現場における抗インフルエンザウイルス薬の選択肢が拡大した.またこれら4剤がノイラミニダーゼ阻害薬であるのに対し,RNAポリメラーゼ阻害という作用機序を有するファビピラビル(T-705)も開発が進められており,近い将来には国内での使用が可能となることが期待されている.各種抗インフルエンザウイルス薬の特長と比較を表1に示した.

 これら抗インフルエンザウイルス薬の位置付け,使い分けについては,今後のインフルエンザウイルスの流行状況,耐性ウイルスの発現状況,製造販売後の調査・臨床研究の結果などにより,明らかになってくると思われる.また日本感染症学会でも抗インフルエンザウイルス薬の使用適応についての新たな提言4)を発表したので,ぜひそちらも参考にしていただきたい.現段階では基本的にどの薬剤を使用することも可能であるが,重症で生命の危険がある症例や肺炎を起こしている症例に対しては,吸入薬ではなく,経口投与のオセルタミビルもしくは静脈内投与のペラミビルを選択するのがよいと考えている(表2).

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