「Summary」心臓や血管の細胞は,血圧や血流に起因する伸展張力や剪断応力など力学的刺激をセンシングし,応答することで循環系の働きの恒常性を維持しており,それが正常に働かなくなると心血管病の発生につながる.最近,細胞形質膜のメカノセンサーとしての役割が明らかになってきた.内皮細胞に力学的刺激が作用すると即座に膜リン脂質の相転移が起こり,膜流動性が変化する.この変化は人工脂質二重膜でも観察され,物理現象と考えられる.この形質膜の物性変化が細胞膜に存在あるいは結合しているさまざまな分子やミクロドメインの立体構造に影響を及ぼし,ひいてはそれらの機能を修飾することで,下流のシグナリング経路が活性化するメカノセンシングの仕組みが想定される.