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特集 肺高血圧症の最新知見と新展開

炎症性シグナルによる肺高血圧症の病態制御と治療

中岡良和

血管医学 Vol.17 No.3, 29-35, 2016

「Summary」肺動脈性肺高血圧症(PAH)は難治性の疾患群で,その発症機序はまだ明らかではない.これまでPAH の病態に骨形成蛋白質受容体Ⅱ型(BMPR2)シグナル異常による肺血管内皮細胞と肺血管平滑筋細胞の過増殖・機能異常が関与することが明らかにされている.この遺伝性PAH(HPAH)の遺伝子異常を有する患者でも約20%にしかPAH が発症せず,疾患浸透率が非常に低いことが知られる.これはPAH の発症には何らかのセカンドヒットが必要であることを示唆しており,その候補のひとつが「炎症」だと考えられている.炎症性サイトカインのインターロイキン6(IL-6)は近年,PAH の病態に深く関わることが基礎研究・臨床研究の両面から指摘されており,IL-6 シグナルを標的とした生物学的製剤がPAH の治療で有効である可能性も示唆されている.本稿では炎症性サイトカインによるPAH 病態形成機構と,その制御によるPAH 治療の可能性を述べたい.
「KEY WORDS」肺動脈性肺高血圧症(PAH),インターロイキン6(IL-6),骨形成蛋白質受容体Ⅱ型(BMPR2),Th17細胞,炎症,トシリズマブ

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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