<< 一覧に戻る

特集 肺高血圧症の最新知見と新展開

病態解明に向けた肺高血圧・肺血管リモデリング・右室機能の評価の最前線

坂尾誠一郎

血管医学 Vol.17 No.3, 17-27, 2016

「Summary」肺高血圧症の肺動脈リモデリング成立機序には,細胞増殖・機能障害,血管攣縮,炎症細胞浸潤,遺伝的素因などさまざまな因子が関与する.特に肺動脈性肺高血圧症(PAH)では,多様な因子による血管内皮細胞障害が肺動脈のリモデリング進行に関与することが示唆されている.さらにPAH の病態はその進行とともに病理学的背景も変化していくため,病態を一期的ではなく経時的に捉え治療戦略を構築する必要がある.症状が具現化する臨床期から進行期への移行をいかに抑制するか,また臨床期と進行期の治療戦略は同様でよいのかなど,重要な課題である.近年,同病態の予後を規定する重要な因子である右心機能不全について,右室心筋細胞をターゲットにしたさまざまな研究が報告されており,新たな治療ターゲットとしての可能性が模索されている.本稿ではまず,PAH における肺動脈リモデリングの成因を内皮細胞障害の観点から解説し,さらに経時的な病態および治療戦略を考察する.そして,肺高血圧症における右室心筋に対する最近の知見を,特にミトコンドリアのエネルギー代謝に着目して紹介したい.
「KEY WORDS」ミトコンドリア代謝,PET検査,右室不全,肺動脈リモデリング,血管内皮細胞障害,BMIPP心筋脂肪酸代謝シンチグラフィー

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る