<< 一覧に戻る

特集 機能性脂質・脂肪酸の多彩な生理活性と病態形成

トランス脂肪酸と血管医学

篠原正和石田達郎平田健一

血管医学 Vol.17 No.2, 75-82, 2016

「Summary」トランス脂肪酸は,常温で液体である植物油を半固形に変換する部分水素添加工程において,副生成物として産生される工業由来のものが大部分を占める.欧米では心血管疾患との関連性が示唆された疫学調査の結果から,広く加工食品での含有量表示が義務づけられ,使用規制も策定されつつある.本稿では,トランス脂肪酸を取り巻くわが国の現況を概説し,次に心血管疾患発症に関わるメカニズムとして,トランス脂肪酸と血管内易血栓形成性について,われわれの基礎実験結果を紹介する.そして最後に,血清中トランス脂肪酸濃度をバイオマーカーとした,日本人におけるトランス脂肪酸と冠動脈疾患との関連性について,疫学臨床研究の結果と今後の課題を提示したい.
「トランス脂肪酸とは」トランス脂肪酸は,少なくとも1つ以上のトランス型二重結合を持った不飽和脂肪酸である.脂肪酸は飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸に分類され,二重結合(不飽和)を1つ以上有する脂肪酸を不飽和脂肪酸と呼ぶ.
「KEY WORDS」シス型二重結合,トランス型二重結合,易血栓形成性,Toll様受容体(TLR),エライジン酸(trans 9-C18:1)

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る